平成 26 年6月 25 日に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」(平成 26 年法律第 82 号)においては、心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)及びその結果に基づく面接指導の実施を事業者に義務付けること等を内容としたストレスチェック制度が新たに創設された(厚生労働省 ストレスチェック制度関係法令等000346613.pdf (mhlw.go.jp))
ことにより、ストレスチェックが導入されている施設もあります。
ストレスチェックを行うことで働いている看護師のストレス状況を把握できるかもしれません。
しかし、それがメンタル不調の予防に直接繋がるかと言われると十分ではないと思います。
上司の存在がメンタル不調者の出現を左右する
看護師は「人の助けになりたい」「支援をしたい」という志で仕事に就く人がとても多い職業です。それなのに、思うように自分の役割が果たせていないことで、壁にぶつかってしまう。それがメンタル不調に結びついていく側面があります。そこで悩みをわかってもらえる存在が、看護師を束ねている看護師長さん、つまり直属の上司になるのでしょう。
「昨日の夜は大変だったみたいだね」と状況を聞いてくれたり、「あの患者さんに何かあったら、私から先生に言ってあげるから」と状況を理解してくれ、最後の場面での手助けを惜しまない上司がいる―。
これが看護師の方のメンタル不調者を出すかどうか、大きな違いとなっているようです。
心が折れる職場 見波利幸著 日本経済新聞出版社(P64-65)
看護師に限らず上司が状況を理解しようとしてくれる、手助けをしてくれると思えるかはメンタル不調者の出現を大きく左右するでしょう。
看護師長だけでなく、状況を理解してくれたり、手助けしてくれる先輩や後輩、同僚も大きな存在となりうるでしょう。
新人看護師だけでなく異動者や復職者もストレスを抱えやすい
新たな仕事に従事することによって、これまで培ってきたスキルや知識が使えなくなる、という面が大きな理由になります。つまり能力が使えなくなってしまうことによる新しい職場への不適応という問題です。
心が折れる職場 見波利幸著 日本経済新聞出版社(P66)
部署異動を経験された方は共感頂けると思いますが、同じ施設であっても部門が異なると今まで培ってきたスキルや知識が使えない事が多々あります。
にも関わらず、経験が長くなると看護師として求められるものは大きくなっていき、異動後のストレスは大きな物となります。
復職者も、部門が同じでも医療は日々進歩しており、休職前のやり方と異なることも多く、これまでのスキルや知識が生かせないこともあります。
以前できていたことが出来なくなっていないかに着目
たとえば、勤務についてはどうか(いつもどおり働けているか、無断欠勤などをしていないか、)ルーチン(一連の通常作業)の勤務が滞るようになっていないか、ミスが増えていないか、納期など業務上の期日が守られているか、会議での発言はどうか、挨拶をしているか、ふさぎ込んでいないか……といったポイントになります。
重要なのは、以前できていたことが、できなくなったのかを見ることです。Aさんであれば、依然のAさんと時系列で比較するわけです。誰かと比べるのは、個性の問題になりますから、まったく意味がありません。
心が折れる職場 見波利幸著 日本経済新聞出版社(P180)
メンタル不調のシグナルについて「以前できていたことが出来なくなっていないか」に着目することが紹介されています。
看護師は仕事柄、人の体調変化には気が付きやすいと思うので、この点を知っていればメンタル不調者を見つけることもできるのではないでしょうか。
いくつかの取り組みの「組み合わせ」がポイント
メンタル不調の人が復職した際に、再発しにくい環境をつくるには、いくつかの取り組みを「組み合わせ」として機能させることが望ましいでしょう。これ1つやれば大丈夫というものではありません。
具体的には、3つのポイントがあります。まずは
- 職場適応を考え、保温人の情熱、仕事の内容、人間関係などについて把握するよう努める
- いかに支援をしていくかというサポート体制をどう機能させるかを考える
- 本人自身の努力や、ストレス耐性を高める心がけ
この3つを合わせて60点ぐらいできればいいのです。3つの取り組みのうち、それぞれが100点満点だったとして、それぞれで20点でもいいわけです。こう考えると、だいぶ気分が楽になります。
心が折れる職場 見波利幸著 日本経済新聞出版社(P207)
メンタル不調の人が復職した際の取り組みとして紹介されていますが、メンタル不調者を出しにくい環境を作る点でも活かせると思います。
まとめ
●状況を理解し、最後の場面での手助けを惜しまない上司の存在は重要
●新人看護師だけでなく異動者や復職者もストレスを抱えやすいことを理解する
●「以前できていたことが出来なくなっていないか」からメンタル状況を把握する
●いくつかの取り組みを組合せることで再発を予防する